今、所属しているイタリアの会社は販売会社。
販売会社の使命は要約して二つ。
販売増(シェアアップ)、利益増。
そのためのアプローチは、
1、本社の指示を理解する。(我社の使命は。)
2、イタリアマーケットの状況、トレンドを理解する。
マーケットは成長しているか?
どのカテゴリが延びて、どのカテゴリがシュリンクしているのか?
この先マーケットはどうなるか?
3、競合他社状況を理解する。
どのプレイヤーがどのセグメントで強いのか、弱いのか。それは何故か。
競合各社の強み弱み、戦略を理解する。
この先競合状況はどうなるか?
4、自社の現在のポジションを冷静に分析する。
SWOT分析(Strong point, Weak point, Opportunity,Threat)
自社の強みは何か?それをどうすれば最大化できるか。
弱点を最小かするには?弱点を強みに変える手立ては?
現在の自社にとっての脅威と機会は何か?
5、上記考慮の上、自社のとるべき戦略、ポジションを選定。
それは、競合と比べ比較優位なポジションを常に取るように努める。
プロダクトに特別優位性のない場合、少なくとも競合と異なるポジション、戦略を取る。
それを実現できる自社組織体制を構築する。
ここイタリアで仕事をする上で、自分が考え、実行していることは上記の通り。
さて、結論的に我社はディーラー販売チャンネルにフォーカスしている。
B to Bの販売には主に、自社チャンネル(自社で販売網を構築)とディーラー販売(地域販売店をアポイントする)がある。
本社のリクエストを実現するには、自社販売網がベターと考えられるが、イタリア販社は自社販売網による赤字が続き、赴任当初多額の累損を抱え自社販売をクローズした直後だった。
赴任当初の目標は累損解消。
とにかく、せこいくらい利益にこだわる。
そこに強い競争力ある新製品群、マーケットの拡大と神風吹いて赴任3年目で累損解消。
で、漸く攻撃態勢の矢先、最も信頼し共に戦ってきたセールスマネージャーが競合他社へ転職。
ブログを書き出した際、今やっていて成功しつつある活動、先週のローマ、ナポリ出張での感動的経験を有頂天で書くつもりだったが、その前に同志であった元セールスマネージャーとの総括をすることに今変更した。
元セールスマネージャーの彼の出社最終日、彼を俺の部屋へ呼んで、以下二つのことを伝えた。
1、転職後、内の会社のスタッフに手をつけるな。(我社からの引き抜きはするな)
これは命令口調で。数名の名前を挙げ、そいつらに手をつけることは許さんと。
2、転職直後、我社有力取引先へのディーラーリクルートは控えるべき。
これは強制できずアドバイス調で。
転職するやいなや元会社の取引先を回ると、それら取引先、新しい会社の既存取引先及び新しい会社の部下からのお前自身の人としての信用をなくすと説明、説得。
彼の答えは、1についてはしないこと明言、2についても、それくらい十分理解しているとの返答。
俺は素直に、理解してくれて、ありがとう、とお礼をいった。
が、結果は、名指ししたセールストップ含め3名を引き抜いた。
内、重要なマーケティング担当者一名は俺がなんとか慰留。
やり方もひどかった。
後引き抜いたセールス2名については、正式な形態で引き抜くのでなく、まだ我社に所属していたまま秘密で彼の会社のセールスのため働かせていた。
更にそのうち一人はトップセールスマンで、元セールスマネージャーの彼の抜けた後、エージェントであった彼を正規社員とし、中部南部セールスエリアマネージャーのポジションをオファーしていた。
当初その彼も前向きであったが、途中オファーを保留。
それを彼の賃金交渉と俺も誤解していたが、裏では元セールスマネージャーが我々のオファーした足元をみた引き抜きの別のオファーをしていたのが実情だった。
元セールスマネージャーはその彼ら含め社内元部下連中とも頻繁に電話で連絡を取り、我社の全ての情報が全て彼に筒抜け状態。
これに対し誰が情報漏洩しているのかと社内はみんな疑心暗鬼となり、その際は俺自身も誰を信用していいかわからず、何度も大切なマネージャークラスを徴集。
「個人として彼にどう接するかはお前たちの自由であり、俺にはそれについて強制する資格はない。が、個人的友人への立場と会社での自分の立場は異なる。それだけはわきまえること。」
昨日の友が今日の敵であることを理解させることは困難。
一つ間違うと俺自身の信用がなくなり、信頼を失う。
ここは時期が大切。
各々が実感するまで待つのが大事。
けど、いつも彼と二人で行ってた日本食屋始め街で偶然会う彼は内の社内動向から俺の言動まで知っていている。
更に社内では、次は誰が引き抜かれるのか、既に誰かが彼から声をかけられてるのでは、と疑心暗鬼。
「何があっても俺はお前たちを信用している。お前たちも俺を信頼してくれ。」
社内で大事な連中にはこういうしかなかった。
また、彼は我社の有力ディーラーだけに的を絞ったコンベンションなどを何度も開催。
更にその中でも大手取引先に対しては、転職先社長を伴って一件一件訪問し、ブランド変更を説得し出した。
ディーラー連中からもいろんな噂が流れてくる。
市場でも有力ディーラーが既に彼のブランドへ転向したとの噂が渦巻く。
極めつけは、
「俺(やまちゅう)がへイタリアを離れて日本へ帰国すること決定した。あの会社も以前の会社へ逆戻りになる」
明らかに彼が意図的に流した噂も多く、それがまた社内へ大きく噂され、実情以上に社内は怯え、お互いの信頼と結束力が失われていく。
俺は誤った噂は否定したが、社内では彼のことは一切批判はしなかった。
その後ビジネスショーや街で彼と会った際、彼が俺含め我社のマネージメントに関する批判、更に彼の新しい会社の敵は我社でなく、他の競合などという説明に対して、一切反論しなかった。
ただ、「おい、俺はバカじゃないよ。」とだけ伝えた。
但し、社内の信頼する仲間にはこう言った。
「彼には俺がいつか必ずわからせる。何が正しいのか。」
今でも時に俺が仲間に言う、
「あいつも、今漸く自分の行為を正しく理解し始めてることやろう。けどまだまだ。これから更に学んでいくことになる。」
仲間は言う、
「もう、あいつのことなんてもうどうでもいい。友でもないし、どうなろうが俺には関係ない。」
俺はいう
「いや、俺は違う。あいつにわからせることは俺の義務なんや。俺はやるよ。」
(でないと、20年後、競合も利害も仕事も関係なくなった時、気持ちよう一緒に飲んで昔を懐かしむことができんがな。。。。)
結局、彼のこれら行為に対し、会社として法的に訴えることとした。
その際、証拠を得るため、会社の現地トップが探偵を雇って明らかに疑わしき社内セールスマン(トップセールス)を調べ始めていた。
最初は俺に秘密で。
俺と彼の以前の深い繋がりから、俺への事前連絡を遠慮していたと思う。
直ぐトップから正直に話してくれたが、俺はストップかけずに了解した。
結果、でるわでるわ。
当時尚我社から給料を得て、我社の経費で働くセールスマンがその転職した彼と一緒に我社の有力ディーラー連中を回っていたこと。
我社に所属していながら、彼の転職先本社へ出入りしていたこと。
これは裁判で有効な証拠となると弁護士からの事前連絡も受けていた。
結果、彼の転職一年近く後、裁判所の元で両社和解。
彼と我社から転職した2名のセールスが我社並びに我社のディーラーに向こう一年間コンタクトすることを禁ずる、との内容。
裁判所での解決はどこでも同じで、問題が深刻な時期が去った後、解決策が提示される。
けど、少なくとも彼含めた社内外に正式な裁判所通知で誤った行為と正しい者が明確化されることは意味がある。
彼の去った後、我社が失ったディーラーはCディーラー1件のみ。
但し、そのCディーラーも汚いやり方を我社にしていた。
俺自身に対しても許しがたい対応を繰り返した。
早々取引契約破棄の通知。
それまでCディーラーとうちのブランド内で激しく争っていたが我社からCより低く扱われていると不満の塊となっていた同地区Lディーラーに接近。
これまでの過去を水に流して長期的関係を構築しようと提案、同地区独占販売権を与えた新たな4年特別ディーラー契約締結。
中でもCディーラー顧客内我社プロダクトのリプレイス(取替)には特別サポートを約束。
更にCディーラーの北部地区にある大手強力他社ディーラーと我ブランドとの4年間独占販売契約を締結。
尚、そのディーラーは過去有力セールスマンをCディーラーから引き抜かれた背景がある。
そのディーラーに対してもCディーラーの顧客リプレイスには特別サポートを約束。
両ディーラーから挟み撃ちで攻撃。
結果、数週間前CディーラーはLディーラーに対して自社売却を提案した。
キャッシュフローに問題が出て、ビジネスをクローズしたいとのこと。
Cディーラーは顧客を攻撃され自社機の置換えされるより、その顧客関係を販売する方を選んだ。
同地区で我社と我社の指定ディーラーへ敗北宣言したわけである。
落とし前はつけた。
元セールスマネージャーの彼の転職はやはり金だったことは否定できない。
それも一つの価値観で、誰しも否定できない。
けど、その後の彼の行動は金以上に大事なものを失わせた。
内の社内を去る直前は、誰もが認めるスター。
それが今や、信用できない汚い裏切り者。
2年前まで彼を仰ぎ褒め称えていた社内の連中も手のひら返したように批判する。
俺はそれら批判に与しない。
なんでも白黒で判断できるほど、世の中も人も単純じゃない。
もっと正直言うと、俺が彼を育て一緒に実績作ってきたとの自負があり彼を単純に悪者にすることは赴任以後の俺の2年間を否定することにもなると思った。
今でもあいつのことは心から憎めない。
ただ、多くのことを共感できた彼とはいつも同じ議論が繰り返されたことが思い出される。
「なあ、ミケーレ、立派なマネージャーとは立派な人でないとなれない。これは間違いないと思う。一緒に立派なマネージャーになれるよう頑張っていこう。」
俺の言葉に彼はいつもいう、
「貴方がイタリアにいる限り、俺は貴方と一緒に働き続ける。」
人一倍昇進や昇給にこだわり常に俺に強い要求をする彼に俺はいう、
「金や地位も大事だが、所詮それらは他人に自分がどう写るかという仕掛けと道具。それより本物を追求するほうが男として美しいと思わんか。日本の武士は貧乏でも大金持ちの商人から尊敬されていた。これかっこええと思わんか。」
これには同意を得れんかった。
日本の美意識はカエサル含め歴史に誇るローマ人を生んだイタリアには通じないのか。
それとも、俺自身が欲深く見得張りなのを見透かされていたかもしれない。
赴任以来常に一緒で、信頼し合い、助け合い、時に争い、怒鳴りあい、笑い、楽しんできた彼が去った08年5月後の一年は、これまでにない格別な一年やった。
http://yamachuit.exblog.jp/8113881/
正直辛いことも多く、眠れぬ夜も何度もあった。
けど、多くを学ばせてもらった。
仕事だけでなく、もっと大事な何かさえも。
今振り返ると、ええかっこ抜きで本当に有難く思っている。
まるで仕掛けられたようなタイミングと内容に驚きさえも感じる。
この経験があったからこそ、イタリア販社での今の自分の立場があると実感できる。
今でも俺は思っている。
ミケ-レ、いつかわからせてあげるよ。
男はどうあるべきか。
俺はどんな男か。
いつか、どこかで、うらみっこなしで、またお前と一緒に本当に心から楽しく飲めることを信じて。